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臨床・診断

前頭側頭型認知症と筋萎縮性側索硬化症におけるTDP-43 proteinopathy

TDP-43 proteinopathy in frontotemporal lobar degeneration and amyotrophic lateral sclerosis
-Protein misfolding diseases without amyloidosis-
Neumann M, Kwong LK, Sampathu DM, Trojanowski JQ, Lee VM-Y
Arch Neurol. 2007;64(10):1388-1394


抄録・解説 LTTプログラム委員 佐々木彰一先生

要旨

 TDP-43 proteinopathy(蛋白症)として知られている疾患群の最近の知見について概説する。TDP-43は病態機序の点から考えて、ユビキチン陽性封入体と運動ニューロン疾患を伴う前頭側頭型認知症(FTLD-MND)と、ユビキチン陽性封入体を有するが運動ニューロン疾患を伴わない前頭側頭型認知症(FTLD-U)の両者を結びつける主たる疾患蛋白である。TDP-43 proteinopathyは孤発性および家族性FTLD-UとALSで共通してみられるため、これらの疾患の脳や脊髄では病的TDP-43の異常リン酸化、ユビキチン化および断片化によりC末端断片が生ずるという相似するメカニズムが働いていると思われる。TDP-43 proteinopathy は蛋白の折りたたみ異常が脳内にアミロイド沈着をもたらすような他の多くの神経変性疾患とは異なる。なぜなら、病的TDP-43は脳内にアミロイド沈着を起こさず、神経細胞内やグリア細胞内に封入体を形成する特徴があるからである。ここでは、FTLD-UやALSのより良い診断法や治療法の発展のため、TDP-43 proteinopathyのもつ独特な意義について論ずることにする。

まとめ

 TDP-43が、孤発性ALSやSOD1非関連家族性ALSと同様に、大部分の孤発性および家族性FTLD-Uに特異的なユビキチン陽性封入体の主な構成成分として見いだされたことによって、長い間謎であったこれらの疾患におけるユビキチン化された疾患蛋白の性質がわかってきた。ユビキチン化およびリン酸化された、またC末端で断片化された、TDP-43の細胞内蓄積は、神経変性疾患の新しい疾患群(TDP-43 proteinopathy)を定義し、TDP-43がFTLD-UおよびALS双方を統合するような神経変性の新しい病態機序に関与していることを示唆するものである。TDP-43の病理学的特徴のオーバーラップは、FTLD-UとALSが共通の病態機序を有し、一方では運動神経障害を他方では認知症に関与する神経細胞障害を引き起こす同一の疾患スペクトラムの線上にあるという神経病理学的および生化学的根拠を与えるものである。

コメント

 TDP-43はtransactivation responsive region (TAR)-DNA-binding protein of 43 kDaの略称で、不均一核リボ核蛋白に属し、RNAの安定化やスプライシング、転写調節などのプロセスに関与する。全身の臓器に広範に発現しているが、脳における機能はなお不明である。TDP-43は、正常では主に核内に非リン酸化の状態で存在する蛋白であるが、異常TDP-43はユビキチン化および異常リン酸化されていて、C末端断片としてFTLD-UとALSの脳および脊髄に存在する。FTLD-UとFTLD-MNDの脳および脊髄では、海馬歯状回顆粒細胞内でみられるユビキチン陽性封入体はTDP-43でも陽性に染色され、またALSの脊髄前角細胞でみられるユビキチン陽性であるskein-like inclusionやLewy body-like inclusionはTDP-43でも陽性に染色される。さらに、ALSで細胞質内にTDP-43陽性封入体を有する変性した運動神経細胞の核は、TDP-43の染色性が低下あるいは消失し、反対に細胞質内には封入体以外にTDP-43陽性の構造物が増加してみられる。このことは核と細胞質間のTDP-43蛋白輸送のメカニズムが障害されていることを示唆している。
 最近、異常TDP-43はFTLD-UやALSのみでなく、SOD1非関連家族性ALS、グアム島のparkinsonism-dementia complex、Alzheimer病あるいはPick病などいくつかの疾患でみられているが、これら異常TDP-43のみられる疾患はTDP-43 proteinopathyの疾患概念に包括されうるとの考えがある。また、最近TDP-43の遺伝子異常が孤発性および家族性ALSの症例で発見され、TDP-43はALSの発症機序と密接に関連していることが判明したことから、TDP-43の重要性がさらに増している。TDP-43の発見は、今後のALSの診断および治療法に大きな影響を及ぼすものと思われる。すなわち、1)血漿あるいは脳脊髄液でTDP-43を測定することができるようになれば、TDP-43 proteinopathyを伴うFTLDとtauopathyを伴うFTLDを鑑別するためのバイオマーカーとなりうる 2)将来FTLDに関して新しい治療法が開発された場合、臨床治験登録の際、存在する病理学的特徴によってtauopathyあるいはTDP-43 proteinopathyのどちらかで登録することになる 3)TDP-43に特異的に結合するリガンドを開発し、生前にTDP-43の病理所見を神経画像でとらえられるようになれば、診断のみでなく疾患の進行度あるいは新薬に対する反応性などを把握するのに強力な手段となる 4)TDP-43そのものが新薬開発において重要なターゲットとなり、今後FTLDやALSの、より有効な治療法となりうる可能性がある、などである。以上のように現在TDP-43にまつわる報告は、家族性ALSにおけるSOD1変異の発見以来のトピックスとなっている。