海外ALSケア施設訪問リポート

第8回 -ベルリン-(ドイツ医科大学チャリテ)

Doctor's Notes

ベルリン医科大学チャリテ(Charité)Virchow-Klinikum キャンパス
ALS/MND外来クリニック訪問記

帝京大学ちば総合医療センター神経内科 尾野精一先生
 ALS 啓発委員会のメンバー 5名は 2009年12月8~10日にドイツのベルリンで開催されたALS/MND国際シンポジウムに出席しました。翌日ベルリン医科大学 ALS/MND外来クリニックを訪問し、そこに勤務している医師、コメディカルの方とALSの患者さんのケアについてディスカッションをする機会を持ちました。その後人工呼吸器を装着し闘病生活を続けている ALS の患者さんの御自宅を訪問し、その生活の一部を見学させていただきました。
 日本において ALS の患者さんおよびその家族、主治医がまず直面する問題は人工呼吸器を装着するか否かについてです。治療法のない病気である以上、人工呼吸器に頼ってまで生きたくないとの理由で、人工呼吸器の装着を拒否される方もいらっしゃいますし、若い患者さんや子供さんがまだ小さいという理由などで人工呼吸器を装着してがんばってみようとされる患者さんもいらっしゃいます。しかしこのような場合でも、医師がいったん人工呼吸器を装着すると途中で人工呼吸器をはずすことはできない旨を説明しますと、多くの患者さんは二の足を踏んでしまいます。この点ドイツではいったん人工呼吸器を装着した後も、患者さんの意思でその中止を決定することができます。私は自分の考えでいったん人工呼吸器を装着したものの、途中で生きる理由や希望を見失ってしまい、ただ器械の力により生かされているという思いを払拭できない患者さんを知っています。
 日本において人工呼吸器を装着し、在宅で頑張っておられる ALS の患者さんが直面する最大の問題はケアの問題です。日本では確かに日中はヘルパーさんが訪問していろいろお世話してくれますが、基本的に患者さんのお世話は喀痰吸引を含めすべて家族がすることになっています。このため患者さんの家族は疲労困憊の状態におかれているのが現状です。私たちが訪問した ALS の患者さんは1人暮らしですが、3人のヘルパーが24時間3交代制で患者さんの生活をサポートしています。当然喀痰吸引もヘルパーさんがおこないます。このように 24時間生活のすべてをヘルパーさんに面倒みてもらっても、患者さんの費用負担はありません。日本では ALS の患者さんのなかには、本当は人工呼吸器を装着し、もっと生きていたいと思っている患者さんがおられると思いますが、これ以上自分のことで家族に迷惑や負担をかけたくない一心で、己の意に反して人工呼吸器装着を拒否する患者さんがおられるのではないかと思います。日本も ALS 患者のケアにおいて早くドイツのようになることを祈ってやみません。