海外ALSケア施設訪問リポート

第8回 -ベルリン-(ドイツ医科大学チャリテ)

充実しているドイツの医療制度

■国民全員が加入

 ドイツでは健康保険の前身は、ビスマルク時代の1883年に始まった。現在は全員加入が原則であり、公的保険とプライベート保険がある。公的保険に85%が加入しており、その場合保険料は収入の14.9%と決められている。基本的には雇用者と被雇用者で折半するが、2005年に導入された特別負担金は被雇用者のみの負担になるため、現在は雇用者が7%、被雇用者が7.9%の負担となっている。
 公的保険会社は数年前まで1,000社近くあったが、現在は統合され、200社あまり。どこを選んでもよい。以前は公的保険会社の間でも保険料に若干違いがあったが、法改正により一律となった。しかしサービスには差があるため、健康保険会社比較のサイトがいくつもある。
 2009年から健康保険基金が設立され、すべての掛け金は基金に入り、加入者の数によって各会社に配分されることになったが2009年は23億ユーロ、2010年は75億ユーロの赤字になるといわれている。2年続けて支出の95%をまかなえない場合は、保険料を上げることが法律で定められている。
 プライベート保険は保険料が高い分、医局長が診断したり、病院での待ち時間が少ないなど特典がある。若いうちは公的と私的で保険料にさして差はなく、私的の方が安い会社もあるほどだが、年をとるごとに私的の掛け金はうなぎのぼりに上昇する。しかも一度プライベート保険に加入してしまうと公的保険に戻ることはできない。公的保険は収入によってのみ保険料が決まり、病歴や年齢は関係ないが、プライベート保険の場合は病歴や年齢、収入によって加入を断られることがある。

■ホームドクターが病歴を把握

 各家庭はホームドクター(家庭医)を持っており、家族でその医師の診察を受けるのが一般的である。どんな病気でもまず家庭医に行き、必要に応じて、専門医や病院に支払い証明書と紹介状を持って行く。場合によっては家庭医が、その病院に直接予約を取ってくれることもある。
 家庭医が紹介してくれる病院が気に入らないときは、自分の加入している保険会社のホームページを見て探すことができる。これは所属している保険会社が契約している病院にしか行けないためである。必要ならば保険会社が必要に応じて病院紹介について相談にのる場合もある。
 医療費は、3ヵ月ごとの初診時に10ユーロ払うが、一度払えばその期間中は何度でも、さまざまな病院や診療科で、自己負担なしに通院治療を受けることができる。検査は項目によって、自己負担かどうか詳細に決められている。基本的に必要な検査や治療は保険でカバーされるが、最近は自己負担の項目が徐々に増えつつある。ただし子どもは少なくとも18歳までは医療費、薬代とも無料である。また、例えば子どもが病気で会社を休まなければならない場合、親1人ごとに年に10日まで、休んだ分の額面の7割を公的保険会社は補填してくれる。そのため会社に負担がかからない。
 歯科と、救急病院(夜中や週末など急病で駆け込む場合)にかかる場合は別途10ユーロが四半期ごとに必要である。歯の治療は最低限のものは保険でカバーされるが、入れ歯や高価な詰め物などは自己負担になる。そのため追加保険を用意している保険会社も多い。
 保険会社によっては1分10円ほどで、24時間体制で医師が相談にのる病気ホットラインを設けているところもある。保険番号を伝えるだけで、専門家の意見がきけるため安心である。

■日常生活を支える健康保険

 医師に必要性を記載した書面を作成してもらうことによって、明確に規定されていないものでも保険でカバーしてもらうことも可能である。例えば ALS 患者が使用する特別仕様の車椅子。買えば 1万ユーロもする高価な医療用具だが、はじめに一度 10ユーロ払うだけで、無期限で貸与される。日常生活に支障がでると判断されれば、保険会社から補助がでるからだ。さらに、保険会社負担で宿泊付温泉治療のコースなど、リハビリプログラムも充実している。
 手厚い保険制度で、人々は安心して生活できるが、高齢化に伴い、医療費はますます増加の一途をたどっている。そのため各社は予防医療に力を入れている。 2009年に始まった健康保険基金制度が早くも大幅な財源不足となるなど、保険制度を今後どう運営していくか、ドイツでは大きな論争を呼んでいる。
小児科や整形外科などさまざまな診療所の入った建物。ドイツではアパートなどの建物に医師が診療所を構えていることが多い。
小児科や整形外科などさまざまな診療所の入った建物。ドイツではアパートなどの建物に医師が診療所を構えていることが多い。
健康用品を販売しているお店
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健康保険から送付される情報誌
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ドイツでも高齢化が進んでいる
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