海外ALSケア施設訪問リポート

第8回 -ベルリン-(ドイツ医科大学チャリテ)

診察から診断、告知までの流れ

■当施設受診までに4~5人の医師の診察、1年以上の期間

 当施設を受診して ALS と診断される新規患者数は年間約 400人であり、これはドイツで最大規模である。近年、人口の多い世代が ALS の好発年齢になってきたため全体的に患者数が増加していることもあるが、当施設はインターネットのウェブサイトを通して、施設の特徴や受診のプロセス、診療内容などを積極的に紹介しており、それが患者数の増加につながっている。ウェブサイトを見た患者さんが直接受診を申し込んでくることもあるし、医療関係者がウェブサイトを見て患者さんに紹介することもある。もちろん、当施設をあらかじめ知っている他の病院から患者さんが紹介されてくることも多い。ALS に対する専門性が高いことから、ファーストオピニオンとしての診断と経過のフォローのほか、セカンドオピニオンとしての確定診断、治療のコンサルティングも、期待されている役割である。
 ドイツでは ALS の場合、患者さんは最初、家庭医にかかり、家庭医は整形外科医に紹介するケースが多い。しかし、そこで整形外科的疾患ではないことがわかると、整形外科医は神経内科医に紹介する。神経内科医は ALS を疑ったり、診断がつかなかったりすると、神経疾患専門病院に紹介する。そこで ALS と診断されることもあるし、さらに当施設を紹介されることもある。したがって、ここに来る患者さんは事前に 4~5人の医師の診察を受けていることがまれではなく、診断に 1年以上を要することも多い。

■受診の申し込み

 患者さんはあらかじめ電話やEメールで受診を申し込む。その際、住所、氏名、電話番号、生年月日のほか、麻痺や構音障害の期間、これまでになされた診断、呼吸機能(肺活量)、嚥下障害(胃瘻造設術の必要性)などについて質問を受け、それに応じた受診日が指定される。障害の程度やコンサルティングの内容によって、ALS の診察には十分時間をとる必要があるので、こうした手続きは欠かせない。ただし、救急や再診の場合は当然、この限りではない。

■医師の診察前に情報収集

 受診当日は受付のあと、まず看護師が、患者さんがこれまでに診察を受けてきた家庭医、神経内科医、病院の主治医、および健康保険、現在服用中の治療薬などを確認する。また、構造化面接の手法を用いて、関連があると考えられるこれまでの既往歴や現在の状態について確認する。既に ALS と診断を受けている患者さん、または ALS の可能性が高い患者さんは、タッチパネル式のコンピューターを使って(必要に応じて同伴家族や看護師が補助)、改訂版 ALS 機能評価尺度(ALSFRS-R)の質問に回答する。こうして得られた患者さんの情報は、コンピューターシステムを介して直接担当医の元へ送られ、担当医は診察前にこれらの情報を確認できる。このシステムは現在、定期的な診察の間の患者状態を把握するオンラインツールとしても研究が進められているという。そのほか、体重、身長、肺活量、体組成の測定なども診察前に実施される。

■診断結果はすぐに患者さんへ告知

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 医師は以上の情報や患者さんが持参した前の病院の検査結果などを踏まえ、患者さんの診察を行う。そのなかでさらに理学的および神経学的検査、針筋電図検査などが必要と考えられれば、実施される。すべての検査が終わると、診断について話し合いが持たれ、現時点で確定診断に至らない場合はさらに次の診断に向けたステップが話し合われる。ドイツでは直接患者さんに診断を告知するのが原則である。そのうえで今後の方針についても自己決定が何より重視される。話し合いの内容は個々の患者さんごとに異なるが、診断未確定や ALS 早期の場合には、診断や予後に重きが置かれ、ALS の確定診断や進行例の場合には、対症療法的なマネジメントの選択肢などが焦点となる。入院治療の必要性や患者さんの居住地域にある病院・家庭医などとの連携も検討される。
 ALS 患者さんは通常 3ヵ月に 1度、この大学を受診し治療方針を含むコンサルティングを受けている。その際、3ヵ月間の体調の変化や、次の受診(3ヵ月後)までに起こることが予想される事柄を共有化し、それらに備えるべき必要な準備のアドバイスを受ける。大学訪問の際の医療費も保険でまかなわれている。
 治療薬としては、アレルギーがある場合を除いて、基本的にほぼすべての患者さんにリルゾールが処方される。治療薬の存在は心理的な支えにもなるため、進行例にも処方しているという。ALS の療養に必要とされるそのほかの薬剤、機器、補装具、理学療法、作業療法、言語療法なども処方される。認可されていない治療を除き、費用は保険でまかなわれ、気管切開したうえでの人工呼吸器装着に伴う在宅24時間介護などにも保険が適用される。